STORY 1章


 腕に覚えのある者たち、あるいは将来の成功を夢見る若き駆け出しが、競い合うように依頼を取り合い、日銭を稼いだり実績を積んだりする場所。どこかむさ苦しく、それでいて活気がある。
 冒険者ギルドにはそんなイメージが似合うのかもしれない。

 だが、このギルドには活気という活気も熱気という熱気もゼロだった。
 そもそもにしてこのギルド、報酬体系が月給制である。働かなくても毎月決まった給料が貰えるのだ。もちろん、誰も働かなくなれば、ギルドの存続は危うくなるのであるが。

 それでも、そこに集う者達にやる気があればこのような雰囲気にはならないのであろう。
 が、事実そうなっているのである。
 丸テーブルで酒を片手に談笑……、などという光景ではなく、それぞれが与えられた四角い机に座り、時間をつぶしている。詳細は割愛するが、時間の潰し方が全くもって駄目な感じである。

 そんな空間を気にするでもなく一人の男性が入ってくる。
 そして、他と同じく机に座るも、タバコをふかしながらも書類を読み込んだり、なにやら書き込んだり等と唯一仕事をしていたような30代半ばの男性に声をかける。

「新しい依頼が入った。早速メンバーを向かわせてくれ」

 社長にそう言われ、あなたは、やれやれと重い腰を上げた。
 これから難題が待ち受けている。いつものごとく…